モブサイコ100 第12話「モブと霊幻~巨大ツチノコ現るの巻~」感想

TVアニメ『ワンパンマン』第2期制作決定!!!
以前にモブサイコ100の方が先に二期が来ると言った矢先にコレ。俺は記録的大ヒット中の「君の名は。」と「聲の形」は絶対にヒットしないと思っていたので、俺にはアイシールド21の鬼兵と同じように逆張りの才能があるのかもしれません。

前回、桜威の刀に斬られ倒れた霊幻。モブは100%になり、事態は最悪の展開に……
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「ほっ」
なりませんでした。
自分が戦わなければいけない局面にも関わらず、「嫌な時は逃げてもいい」と言う霊幻の言葉にモブが出した答え。それが【逃げる】=【戦わない】=【師匠に任せる】。さあ、ここからはお待ちかね、師匠のターンだ!
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「ならば、次は首を落としてやろう!」
「いでっ。あのなぁ~……お前らにはわからないかもしれないが、チャンバラ遊びに付き合える程……社会人は暇じゃねぇんだよ!」

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「桜威そこどいて!キャンディちゃん!」
「あれ?やけに軽いな……ぬいぐるみ?ゆるキャラかてめぇは!」

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「調子に乗るなよ」
「なんだこりゃ、最新の立体映像ってやつか?……何がしたい?」

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「シャボン玉か?」
コミカルなBGMも手伝って、霊幻の調子乗った感じが面白い。
「爪」の幹部たちの超能力を圧倒的な力で粉砕する霊幻。もちろん霊幻は超能力者ではありません。ではなぜこんなことが出来るようになったのか。
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『「逃げてもいい」。その言葉を聞いた瞬間、モブの中で歪に膨らみ爆発したエネルギーは行き先を変えていた。人の言葉が与える影響は時折計り知れない』
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『力を持つ者は戦わなければいけない。その責任がモブの橋を崩していた。しかし誰かがそっと手を伸ばすだけで心の解決につながることもある。結果、一時的にモブの持つ全エネルギーが霊幻に丸投げされた。実質逃げ果せたのである。晴れやかな気分で』
力を持つ者は戦わなければならない。スパイダーマンのベンおじさんの有名なセリフ、「大いなる力には大いなる責任が伴う」、 に代表される考え方ですね。実際正しい考え方だと思います。しかしモブはその誰も並ぶことの出来ない強すぎる力のせいで、人と争いたくない性格である自分を苦しめてしまっていました。そこに手を伸ばしたのが非能力者の霊幻というのが実に良い。例え力がなくとも、意志があれば人を救うことは出来るのだと思わされます。
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『心にあるのはただ一つ。師への感謝』
原作でこの話を読んだ時は膝を打つ思いでした。まずこの場において場違いな霊幻(=ノーマル)が爪(=超能力者)を倒すというのが非常に痛快であるし、さらにモブが霊幻にエネルギーを丸投げしたことでモブの霊幻への信頼が見て取れるのも素晴らしい。見事な展開です。

この力がモブのものだと気づく霊幻。そこに斬りかかる桜威。いい年して遊んでんじゃないと言う霊幻に桜威はブチ切れ。世界を呪わずには生きていけなかった自分の孤独な過去を語ります。それを聞いて「わかるよ、その気持ち」と霊幻。
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「俺も子供の頃……小4くらいだったかな。親にその日運動会だってこと伝えてなくて俺だけ弁当がなかった」
こんなテキトーな人間に「わかる」と言われた桜威に、心の底から同情します。

どんなに特別な力があっても人は人。それ以上でもそれ以下でもないと言う霊幻。自分が大きくなりたいなら世界征服なんて夢を見ずに現実に生きろと、弁説をぶち上げます。
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「今更……庶民に戻れと……」
「いやいやいや!舐めんなよ!まだわかってねぇな!自分の事なんだと思ってんだ!庶民だよてめぇは!平民!大衆の一部!」
「わ……我々爪は崇高な……」
「俺は庶民だ!お前らより圧倒的に強い俺が庶民で、でだ!お前らはなんだって?」
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アニメを見て心の折れる音が聞こえたのは初めてです。
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「違う!断じて違う!」
そこに待ったをかけたのは、遺志……黒……?
遺志黒支部長の中身はおじいちゃんでした。武装錬金の毒島のような、中身が美少女ってことはありません。マンガだと声は想像するしかないんでそんなに驚かなかったのですが、アニメではロリ声だったのでアニメ組の人はびっくりしたことでしょう。

「人は人、それ以上でも以下でもない。そう言ったね?それは違うよ、それは逆に乱暴だ。アタシたちは特別だ!他の人類よりも、上位の生命体だよぉ!」と言う遺志黒。
「それは逆に乱暴だ」という一点のみ同意。上位の生命体であるかはさておくとして、やはりノーマルと超能力者では確かな隔たりがあると思います。先週の「超能力も特徴の一つ」と言う言葉も乱暴そのもの。しかし、別に霊幻の言葉が絶対的に正しい必要はありません。彼は詐欺師であり詭弁家なのですから。大事なのはそれを相手が受け取るかどうか。
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「いや、超能力持っててもモテないですよ」
「それが全てだ。あんたもモテない。諦めろ」
そして超能力者は特別という考えに対するカウンターが、誰よりも強い超能力を持っているにも関わらず誰よりも地味なそれこそモブキャラのようなモブというのが本当によく出来てます。

遺志黒の最後の攻撃は突如現れたショウによって阻止され、悪霊使い魔津尾の切り札である蟲毒もエクボに全て食べられてしまいました。「爪」第七支部、壊滅。
モブ一人だけでもこの局面を切り抜けることは出来たでしょう。しかしその場合、もしかしたら爪の何人かを殺してしまい、最悪力を抑えきれず律とテルを傷つけ、モブは一生癒えない心の傷を負ったかもしれません。かと言って、力のない霊幻だけでは言葉が通じず為す術がない。この二人が揃っていたからこそ、死傷者0(遺志黒除く)という結果に終わることが出来たのです。

日常に戻ったモブたち。
かつて不良を「大掃除」しようと画策した生徒会長の神室はいつの間にかすっかり浄化され、自分が貶めた鬼瓦たちに謝りに行くと律に言います。
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「僕も行きます。でも大丈夫ですか?全校生徒の嫌われ者になりますよ」
うーん、どうなんでしょう。ふつうあれだけのことをすれば嫌われ者になるどころか退学になると思うんですが学校から何らかの処分をくだされてもおかしくありません。原作ではこの後の話で神室がまた生徒会長に当選したというのも納得のいかなさに拍車をかけます。

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「俺が犯人かなんてどうでもいいんだ。材料があればそれに乗じて俺を追い出す空気があった。問題はそこだ。周りから死ぬほど嫌われてたことに気付いたぜ。あと自分の心の脆さにもな」
鬼瓦は怒ったりせず、ただ己の不明を恥じ粛々と受け入れていました。これも肉改部の成せる業か……。
さて、我らが主人公モブはというと、
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ただひたすらに走っていました。超能力も使わず死にそうになりながら走る姿はバカみたいですが、しかしだからこそモブは誰よりもカッコいい。

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エンディングのあと「爪」のボスが出てきました。これで二期をやらなかったら嘘ってもんです。
マジンガー……神様ドォルズ……デッドマン・ワンダーランド……うっ、頭が……。

終わりと思ったらCパートと言うよりDパートがまだ残っていました。
ツチノコを捕獲しに出向く霊幻とモブ。
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「ほら松茸だぜ!でけー」
当初の予定を忘れ松茸に夢中になる霊幻。つーか私有地で松茸とるのはふつうに犯罪です。
そしてこれがモブサイコ100の優れている点ですね。霊幻は決して善人ではなく、本質的にはモブの力を利用しようとする人間のうちの一人です。そのため物語は単純な勧善懲悪にならず、霊幻が論説をかましてもそこに偽善臭さはありません。根底にあるのは「おまえが言うな」というギャグであり、それゆえ見ていて痛快にはなっても不快にはなりません。この構造は本当に見事と言う他ないでしょう。
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最後はONE先生の原画で締め。

モブサイコ100総評
製作がBONESということで、最初から心配はしていませんでしたが実に素晴らしいアニメ化でした。以前にも書きましたが、ONE先生独特の空気を見事に再現出来ていました。同じONE先生原作であるワンパンマンのアニメは、テンポの悪さというか変な間のせいで俺には合わず、途中で見るのをやめてしまいましたが、モブサイコ100は最後まで楽しませていただきました。
なんといっても戦闘作画がすごかったですね。モブたちが動く動く。.hack//SIGNのようなまるで動かないアニメも好きですが、やはり動きがあるとそれだけで見ていて楽しいものです。
オープニング、エンディングともに良かったです。特にオープニングのサイケな映像はモブサイコ100の感じを十二分に表現できていたし、ブロッコリーや原稿用紙といった既読者向けのファンサービスがあるのも心憎い。
私は原作既読組でしたが、原作でここらへんを読んだのはもう三年以上前なので結構忘れており、ずいぶん楽しく見させてもらいました。
声優も良かったと思います。なんといっても霊幻役の櫻井さんは当たり役ですね。モブの声も、調べたら新人も新人、ど新人でしたが、モブにピッタリで演技もうまかったです。
褒めてばかりですが、実際欠点が見当たりません。強いて言うなら、最初の除霊路線があまり面白くなく、スタートダッシュが遅かったことでしょうか。もちろん必要な話ではあるので無駄ではありませんが。
総じて完璧なアニメ化だったと思います。原作ファンもアニメファンも両者ニッコリでしょう。
スタッフの皆さん、まことにありがとうございました。二期を心待ちにしております。