Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 最終話「新たなる使命」感想

聞いた話ではサンファンはもともと12話の予定で、ぶっちーが無理言って13話にしてもらったとのこと。それでも最終話は結構展開が早かったので、当初の予定通り12話構成だったらどうなっていたのやら。無かったことを心配しても仕様がないので、今はただThunderbolt Fantasyという不世出の傑作を13話も見れたことに感謝するだけです。

前回の感想で殤ではなく凜がそのまま蔑天骸を倒すかもしれないと書きましたが、実は本気でそうは思っていませんでした。もし蔑天骸を倒せるだけの腕があるなら、多くの局面を彼一人の力で切り抜けられたでしょう。わざわざこっそり天刑劍を盗もうとすることもありません。
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「フハハハハハハ!なんだそれは?どんな馬鹿げた冗談だ。鳴鳳決殺を切った俺に、鳴鳳決殺から逃げまわっていた貴様が、剣で挑むだと?貴様は怪盗として名を馳せるより、道化師にでもなるべきではないのか?」
剣を構える凜を嘲り笑う蔑天骸。俺の言いたいことを大体言ってくれました。そうだそうだ!何とか言ってみろ掠風竊塵!
しかし蔑天骸も俺も凜雪鴉と言う人間をまだ完全には理解していなかった……。

道化師の相手は獣が相応しい、と言う蔑天骸は魑翼に凜を始末させようとします。それを阻止しようと切りかかる凜を軽くあしらい、蔑天骸は風笛を投擲。が、何やら余裕ありげな凜。壊れた風笛で呼び出された魑翼は猛り狂い、笛の持ち主に襲いかかる。なんと凜は蔑天骸と数合切り結んだ時に恐るべき剣技で風笛に深い傷をつけていたのでした。仕方なく蔑天骸は自分で呼び出した魑翼を始末します。

それ程の腕があれば、殺無生と雌雄を決することも容易かったはず。なぜ逃げ回っていたのかと聞く蔑天骸。
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「あの男は自らより強い男を欲していただろう?私を殺したがっている奴をわざわざ喜ばせてやる道理がどこにある?」
こいつは……こいつはどこまで……。
凜はその気になれば殺無生を倒せただろうに、自らの剣技を隠し、彼に命を狙われるのを良しとしました。その理由というのが殺無生を喜ばせたくないためだけ。なんて嫌なやつなんだ!
以前凜は殤に、それほどの腕があるなら他の者に声をかけなかったと愚痴りましたが、凜ほどの腕があるなら自分一人で魔脊山を突破できたことでしょう。そうはせずに、わざわざ他人を利用しようとするところが実に嫌なやつです。同じように力を隠していた殤とはまるっきり違います。凜は自分の愉悦のためになるから黙ってるだけ。返す返す言いますが、本当に嫌なやつです。これでは冥土で待ってる殺無生も浮かばれません。しかしその、悪人すらおもちゃにしてしまう嫌なやつというのが、凜の魅力でもあるのですが。

凜のことがちーっとも理解できない蔑天骸は、なぜ盗賊などに身をやつしたのか問い質します。その答えは、
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「剣には、飽きたからだよ」
「飽きたぁ?」
「あぁ。剣の道は極まれば真理に通じてしまう。若かりし頃はそれも良いかと思ったが、ある時気づいてしまったのだ。我が魂の愉悦は偽りと欺きの中にこそあると」
この答えに蔑天骸はイライラ。
そして始まる凜雪鴉VS蔑天骸。効果音がもはや剣のそれじゃない。まるで空間すら切り裂きかねない音です。
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背景の月もあって美しい……。ここらへんでもう興奮しまくり。
最強と自負する自分の剣を、難なく制する凜に蔑天骸は憤ります。貴様のようなふざけた奴に、剣で並ばれるのは認めないと言う蔑天骸。仮に俺が自分の自信のある分野で、凜のような人間に打ち負かされたら同じような反応をするでしょう。なんだか蔑天骸に同情したくなります。

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「そもそも目指した場所が無双の強さなどという時点でお前は何もわかっていない。この道が辿り着く先は山の頂などではなく無辺の海原のようなもの。極めるほどに果てが見えなくなる」
「剣を侮り軽んじ者が、知ったふうな口を利くな!」
「むしろ侮らなかったからこそ、遂には嫌気が差したんだがねえ」
凜の語る強さ論。しかし武には果てがないという答えを得たにしては、凜はかなり若く見えます。天才だったのか、それとも実は結構トシなのか。

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「役魔陣・暴亂黄泉!」
「天霜・煙月無痕!」
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二人の戦いで地球がヤバい。

壮絶な戦いに見えて割と一方的だった戦いは、凜の勝利で幕を降ろします。
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「なぜ……刃を収めた?」
「私が辿りつけたのは、せいぜいが不請の殺人剣。正道を貫けば、邪道を断ってしまう。だが……それはつまらん。私はどんな邪道とて、断ち切りたくはないのだよ。世にのさばる悪党はからかって遊ぶほうが余程いい」
「ここまでの戦い、全ては俺に屈辱を与えるためだけに……!」
ようやっと凜という人間を理解し、蔑天骸は激おこ。
これで終わりかと思いきや、しかし蔑天骸も譲りません。蔑天骸が凜のことを理解していなかったように、凜もまた蔑天骸を見誤っていました。
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「クカカカカカ……。成る程、俺は貴様に屈した。ならば俺は!それに勝るものを!貴様から奪ってやる!貴様が愉しんでやまぬ人間ども、満悦のうちに過ごすこの世界を、善も悪も区別なく滅ぼし尽くしてくれようぞ!!」
蔑天骸の選択。それは天刑劍を破壊することで妖荼黎の封印を不可能にし、凜に愉悦を与えてくれる人間全てを滅ぼすこと。これにはさしもの凜も大慌て。蔑天骸は天刑劍を盛大にぶっ壊します。そして折れた切っ先は蔑天骸のところへ……。
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「どうだ凜雪鴉。己の遊び心のせいで、世界が……滅びる……気分……は……」
蔑天骸、死す。
玄鬼宗の宗主にして、自身に絶対の自信を持つ比類なき剣士。圧倒的力とカリスマで物語を引っ張った名悪役でした。彼の不幸は凜雪鴉に狙われてしまったこと。そう言えば結局殤との絡みはほとんどありませんでしたね。

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「この私を前にして笑いながら果てるだと……?その驕慢を、傲岸の魂を砕かれておきながら、なお……。ふざけるな……ふざけるなよ卑怯者!敗北したなら屈辱に身を捩れ!悔恨の涙を流してみせろ!貴様は何のために生まれてきた。何のために、私と戦った!?ここまで手間を掛けさせておきながら、肝心の褒美を持ち逃げしようとは……。おのれ……おのれぇ!」
おのれぇぇぇ
試合に勝って勝負に負けた、といった感じでしょうか。相手の、屈辱や嘆きに身悶える様を眺めるのが愉しみな凜にとって、笑って死なれるのはこの上ない敗北です。蔑天骸は実質勝ち逃げに成功しました。ここに来てようやく本心が掴めない凜の、心からの声を聞けた気がします。
「何のために私と戦った!?」という言葉がブーメランなのも面白い。蔑天骸からすれば、屈辱を与えるためだけに戦われたのでは「何のために戦った」と言いたくなるでしょうし、お互い様です。

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「大儀であるぞ、我が同胞よ。今再び、光の大地に我が咆哮を轟かす時」
遂に復活する妖荼黎。って声は田中敦子かよ!まさかナレーションがラスボスとは。鋼の錬金術師FAと同じパターンですな。
刑亥はここでフェードアウト。まあ多分生きていると思います。しかし俺の予想一個も当たんなかったな。

さて、天刑劍は蔑天骸によって破壊され、状況は絶望的。凜は殤たちに合流し、事の次第を話します。
「剣を壊されたってのはどういうこった!?てめえ、さてはあいつに妙な追い込みをかけたんじゃねえだろうなあ!?」と問い詰める殤。
図星オブ図星。ちったあ反省……しないのが凜雪鴉なんですよね。それが彼の魅力であり、反省なんてしたらそれはもう凜雪鴉じゃありません。

妖荼黎を封印していた天刑劍は失われ、もう為す術はない。このまま世界が魔神に滅ぼされるのを見ているしかないのか。……いや、俺達にはまだあいつがいる。西の果てより来た無頼漢、“刃無峰” 殤不患が!
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「そなたらの希望の綱、天刑劍はもうないのだぞ」
「剣、剣、剣!どいつもこいつも口を開けば剣ばかり。いい加減にしろよ、お前ら。刀剣なんぞ所詮は道具、畢竟するに爪楊枝とそう違いはねえ。何を断ち切るのも守るのも、結局は柄を握る人間次第だってえの!」
これを聞いたら蔑天骸はどんな顔をするのやら。
エルシャダイイーノックが使う武器を神は爪楊枝として使っているという話があるのですが、それとこれとは全く関係ありません

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「アッハッハッハッハ!虫けらにも劣る定命の者よ。そのちっぽけな腕で何が出来ると?」
「そうさなあ。二本の腕と十本の指で、俺たちゃ道具が扱える。そして道具ってもんの利点はな、他に変わりがいくらであるってことさ!」

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「人心を惑わし天下を乱した、魔剣妖剣聖剣邪剣。西幽を巡り歩いて集めに集めた三十六振り!悪魔祓いから神殺しまでなんでもあるぜえ。さあ、どれの切れ味を試してみたい?」

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「さあ、一世一代の大仕事だぜ、劫荒劍!いざ!洪荒禁窮獄!!」
劫荒劍の形が七支刀。ちなみに俺が七支刀を知ったのは神羅万象チョコなんですが、あれってもう十年以上も続いているんですよね。当時はそこまで続くなんて想像もしてませんでした。

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「な、なんだこれは……。魔界とも違う、この闇は一体……!」
「宇宙の彼方で、時空の狭間を永遠に彷徨うがいい。あばよっ!」
「おのれぇ……おのれぇぇぇぇぇ!!!」
倒せないなら宇宙に飛ばせばいいじゃん!というジョジョ第二部的発想。
妖荼黎はデウス・エクス・マキナ気味な方法で消え去りました。うーん……。
いや、これで良かったと思いますよ。劫荒劍のエフェクトは派手派手だし、それをスクロールから取り出す仕草もカッコいい。剣を選ばない殤が剣を集めていたというのも意外性があっていい。でもやはりご都合主義感は否めません。一応殤が神誨魔械の偽物を多く見てきたという伏線はありましたが、少々伏線としては弱い気がします。あと、CGを駆使した人外とのバトルよりも、人間同士の殺陣のほうが個人的には見応えがあって好きなので。

殤はかつて西幽にいたころ、争いのもととなる力ある剣を、迷惑になるからというお人好し100%な理由で集めていました。しかしそうしているうちに今度は集めた剣を奪おうと殤の命を狙う者が現れるようになり、捨て場所を探し求めていたら鬼歿之地を通り越して東離に辿り着いていたとのこと。強大な力を持つ剣を捨てるために旅をしていたとは、ロード・オブ・ザ・リングみたいな感じですね。しかし鬼歿之地でもダメとなると、集めた剣はどんだけ危険なんだ……。

妖荼黎を封印した世界との穴が完全に閉じるまでざっと100年。それまで劫荒劍の封印を守るのが丹翡の新たなる使命となりました。
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「はあ……。ここからもう一度剣を守る聖域を建て直すのか?やれやれ。気の遠くなる話だ」
「お前らなら出来るさ、だろ?」
凜よ、本当ならお前も手伝うのが筋だからな!なに自分は部外者ですみたいな顔しとんねん!
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「ああ、任せとけ。なっ?」
「……はい」
「うんうん」
立派に成長した捲殘雲ですが、色ボケは治らず。

すべてが終わり、丹翡とくっついた殘雲は、丹翡から護印師の剣術である丹輝劍訣を学びます。
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「ああ、情けない。この程度で音を上げてどうするのです!」
丹翡っておっとり系に見えて結構ずけずけものを言うタイプですよね。俺も丹翡ちゃんに情けないって言われたいお( ^ω^)
さっそく尻に敷かれる殘雲。納まるところに納まった感じです。

別れも言わず去ろうとする殤。そこに現れた凜。お前のような面白い男と別れるのは惜しいと言う凜に、殤は絶対についてくんなとつっけんどんな態度。いいですねこういうの。相棒の右京さんと神戸みたいな、仲の悪いバディものは見ていて飽きない。ホントは仲がいいとかじゃなくてマジで仲が悪いというのがいい。
凜は餞別と言って第一話の時と同じ見た目の雨傘を殤に渡します。
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去っていく殤。しかし言われてはいそうですかと引き下がる凜ではもちろんありません。
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「確かにあいつから盗むものは何もない。だがあんな物騒な魔剣目録など持ち歩いている以上、奴はこれからも次々と新たな悪党に付け狙われることだろう。中には私の食指が動くような極上の奸物がいるかもしれん。見逃す手があろうものか」
凜は自身の愉しみのため、殤にくっついて行きました。これから先、凜のおかげで被る被害を考えると殤に同情します。

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「狂風驟雨催紙傘、遊人浪跡步不休。天地滂沱如何渡、蓑衣褪盡任濁流」
最後の最後に殤の念白が流れました。絶対に妖荼黎との戦いで流れると思っていたので、これは良い意味で予想外でした。
日本語訳は、「傘が折れるほどの嵐であろうと、流浪する旅人の足は止まらない。滂沱たる風雨をどう渡り切るか……、雨を凌ぐ蓑を脱ぎ、濁流に身を任せよう」
そう言えば丹翡に力を貸し、なぜそこまで体を張るのかと問われた時、殤は成り行きだと答えていました。「濁流に身を任せよう」という言葉は一見無責任のようですが、殤のお人好しぶりがよく表されていると思います。

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殤が投げた傘は地蔵にかかりました。傘に始まり傘に終わる。実に良い終わり方です。

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Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀、続編制作決定!

建前→え、もちろん知ってたさ。当たり前だろ?サブタイトルが「新たなる使命」ってことからも続編があることは読めてたし(←二期と全く関係なかった)。だいたい最近は分割2クールをすぐ二期、二期って呼ぶけどぼかァどうかと思うな。あんなに出来の良い人形を使うのがワンクールだけってのももったいないし、まあ既定路線だよね。

本音→やったあああああああああああまたサンファンが見れるぞおおおおおおおっしゃああああああああああああありがとおおおおおおおおおおおかわりもいいぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおお

ところでこの新キャラを見てくれ。こいつをどう思う?
続編
すごい……西川貴教です……。特にオレンジ色なのが。
と思ったらマジで西川をモチーフにした人形でした。二期にどう関わってくるのでしょうか。

総評は長くなりそうなので次の記事で書きます