舟を編む 第六話「共振」感想

香具矢のような女性と付き合いたかった……ただそれだけの人生だった……。

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前回香具矢に恋文を渡した馬締は、返事があるのではと思い朝まで正座待機しますが香具矢はやって来ません。お前は中学生か。
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出かけようとすると意中の人とバッタリ。香具矢はなにか言いたげですが、馬締は慌てふためいてこれをスルー。お前は中学生だよ。
落ち込む馬締に、今日中にケジメをつけろと西岡は発破をかけます。

一方辞書編集部では、大渡海制作のかわりに申し渡された玄武学習国語辞典の編纂が問題に。時間も人手も足りない状況に、大部――巻数やページ数の多い辞書を一人で完成させた人もいる、と松本先生は言います。
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言海。明治時代の国語学者大槻文彦がその私財と持てる時間を全て投げうって完成させた、日本で初めての近代的な国語辞典、とのこと。
私は昔一人で同人誌を作って相当大変な思いをした経験がありますが、これはその比ではないでしょう。一体どれほどの難行だったのか、想像するだけで目を回しそうです。一ページ見るだけでも大槻文彦の凄まじい情熱が伝わってきます。
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何がそこまでさせたのかと問う西岡に、「業」というものかもしれない、と松本先生。
業。カルマ。宿命。自分の気持ちながら、しもし自分ではどうにもならない気持ち。人を突き動かすエネルギーこそが業だと私は思います。
どうにもならない思いに駆られ仕事をする、私たちも同じはずだと松本先生は言い、辞書編集部の面々は気を引き締め直します。

しかし大渡海作成を続ける条件は辞典の編纂一つではありません。西岡は自分が宣伝部に移動になることを皆に話します。
西岡と馬締がいれば安心だと思っていたのに、と零す松本先生。自分が大きく期待されていたことを知り、しかしその期待に応えられず歯噛みする西岡。西岡としては認められていたことが嬉しくもあり、しかし力になれないのが悔しくもあり、そんな職場を離れなければいけないのが悲しくもあり、複雑な気持ちでしょう。
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(西岡さんがいなくなったら会社との折衝も編集作業をまとめるのも……、全部僕一人で?)
その一方で大問題を抱えることになった馬締。全ての業務を一人でやることがそもそも激務であることに加えて、馬締には対外的な仕事が絶望的に向いていません。あらためて西岡の存在の大きさが際立ち、その消失に伴う穴の大きさが馬締にのしかかります。

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家に帰ってもうつろな馬締。今まではただ自分が好きな辞書編集という作業をやっていれば良かったですが、これからはそうもいきません。馬締の精神世界もまた、言葉の海から泥沼に変わり、辞書編集は以前とは違った意味で大変な仕事となりました。それはそれとして「みっちゃーんお湯ピーッて」と言うタケさんが可愛い。

馬締は自分の書棚から言海を取り出し、その中に込められた思いに思い馳せます。
思い出すのは松本先生の言葉。皆「業」としか呼べないものに突き動かされ辞書を作っているのだと考え、馬締は再び大渡海を作ることを決意します。そしてそのためにもけじめをつけると決め、自分の恋に決着をつけるために香具矢と相対します。
自分が昨日渡した恋文の返事が欲しいと言う馬締。果たして香具矢の答えは……
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「ごめん!」
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ククク……馬締くん!これで君も晴れて独り身の中身入りだ!なに、落ちこむことはない!我々がついてる!今年のクリスマスは一緒に過ごそうじゃないかハーハッハッハッハ!!!

夜、馬締の部屋に香具矢がやって来ました。どういうことだ……?馬締の恋は終わったはずでは……?
香具矢によれば、馬締に手紙を渡されて、ラブレターかと思ったけど文章が難しく確信が持てなかったとのこと。あぁ、ちゃんとラブレターかもと思ってたんですね。まるで思い至っていないのかと考えていました。この辺結構映画と違うので。
そして一晩悩んでも結論は出ず、思い切って馬締に聞こうとしたら馬締は逃げてしまい、香具矢も香具矢で思い悩んでいたのでした。
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「好きです」
「うん」
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「私も好きです」
香具矢のような女性と付き合いたかった……ただそれだけの人生だった……。
アニメを見てここまでダメージを受けたのは久々です。そもそも私が恋愛が主軸のアニメがそれほど好きじゃないというのもありますが、アニメの中の惚れた腫れたを見ていても現実味が薄すぎてあまり心が動かされません。あまりにかけ離れすぎていて自分と同じように捉えられないのです。しかし舟を編むはリアリティをもって物語を描いているので必然自分にはなぜ隣に誰もいないのかとか考えてしまい死にそうです。別にこの二人が嫌いというわけではありません。むしろ応援すべき素晴らしいカップルであるからこそそうなりたくてもなれなかった自分が浮き彫りになり……あああああああああああ!
よく「リア充爆発しろ」なんて言いますが、私はあの言葉嫌いです。何故ならそういうことを言う人の前で実際にリア充が爆発したら言った奴は嬉しくなるどころかドン引きするに決まっているからです。なので馬締は私の見えないところで爆発してくれ。

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