Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 第一〇話「盗賊の矜恃」感想

凜雪鴉マジ外道。
凜雪鴉がどういう人間なのかが語られました。恐らく最終回は凜が勝ったと見せかけて本当は殤が出し抜いたと見せかけて凜の一人勝ちに終わるのではないでしょうか。凜雪鴉の深謀遠慮に殤が勝てるとは、ちょっと考えられません。

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今回殺陣は最初の殺無生無双だけでした。少しばかり残念。
前回のヒキから時間が遡って、殺無生が七罪塔に乗り込むところからスタート。殺無生は立ち向かってくる玄鬼宗を虐殺します。まるで無双ゲー。かつて、鳴鳳決殺の剣の前に数は意味を為さないと言っていたのも納得です。眼が光る演出も最高にハッタリが効いていて超カッコいい。でも、もうこの世にいないんだよなあ……。惜しい人物を亡くしました。

凜雪鴉の前に現れる殤不患。天誅の時は今!とはならず、自分を殺せば天刑劍は蔑天骸に渡ると言う凜に、殤は矛を収めます。ここで殺しておけば……とならないことを祈るのみ。
全然関係ないですが、以降殤が凜雪鴉のことを凜と呼ぶ場合、「それでは凜と。ああ、この響きは実に君に似合っている」とか言うのでしょうか、声優ネタ的に。

私とお前なら蔑天骸を出し抜き、天刑劍を奪い返すことが出来ると語る凜。誰がお前の手伝いをするかとすげない殤に、自分が天刑劍を奪う手伝いを殤がするのではなく、殤が天刑劍を取り戻す手伝いを自分がしようと凜は言います。怪しい……、怪しすぎる。
ござるかぁ?
極東のエセ侍でなくとも本当なのかと言いたくなります。
雲霄や刑亥から聞いた話とずいぶん違うと言う殤に、彼らは魔脊山攻略のために口八丁で呼んだだけと凜。ならば自分は何のために連れてきたのか殤は問います。
「鋭眼穿楊も泣宵も筋金入りの悪党だ。どちらも隙あらば私を出し抜いて天刑劍を独り占めしようとするに決まっている。そこで、お前だ。どこから来たのか、どうやって私と知り合ったのかも定かでない仲間が一人いるというだけで、連中は警戒して、企み事を巡らせる余裕が無くなる。そういう牽制にお前はうってつけだった」
殤の役割とはそういうことだったんですね。そしてこの策は見事に当たり、なんの裏もない殤を狩雲霄らはずっと疑っていた、と。
「ふだけやがって、俺はただの囮役かよ」と当然怒る殤に凜は「それについては私も文句が言いたい」逆ギレ。殤がかなりの手練だと分かっていれば、他の者に声をかける必要などなかった、何故教えてくれなかったのだと愚痴ります。それこそ殤の言う通り「勝手なことを」といった感じでしょう。わざわざ自分がどれほどの使い手か教える必要などどこにもないのですから。能ある鷹は爪隠す。
まだ信用ならない殤に、自分は天刑劍それ自体には興味はなく、蔑天骸から天刑劍を奪ってやりたいだけだと言う凜。これについては後ほど。
天刑劍の鍔は殺無生と出くわした寺に隠してあると凜は言いますが、果たしてそれも本当かどうか……。
信用はできない、されど他に手もなく、蔑天骸から天刑劍の柄を奪い取るため殤は一旦凜と手を組むことにします。あぁ、凜の筋書き通りにことが運んでいく……。

さて、蔑天骸は凜雪鴉の要求に、黄金五千金で手を打つポーズで応えました。
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↑黄金五千金で手を打つポーズ
しかし凜の要求はまだ終わらず、黄金は下界で用意すること、それを運ぶ荷車もつけること、下山する時には気性の穏やかな魑翼をつけることを要求します。注文の多い凜雪鴉。

兎にも角にも交渉成立。次にするのは悪巧み。蔑天骸を引きつける凜雪鴉と金庫を破る凜雪鴉、二人の凜雪鴉が必要だと凜は言います。そんなことは不可能だと言う殤に、凜が手渡した頭巾。それを被ると……
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アラ不思議、殤の顔も声も凜雪鴉のものになりました。要はイエローテンパランス
金庫を敗れるのは本物の凜雪鴉だけなので、蔑天骸を案内するのは当然殤に。大丈夫なのだろうか……、色んな意味で。

どうしても凜の行動に納得出来ない殤は、何故今まで会ったこともない蔑天骸から天刑劍を盗もうとするのか問い質します。凜は「人生のどこに意義を見出すのかというだけの話さ」と述べ、すごい楽しそうにこう続けます。
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「私にとって人生とは娯楽だ。そしてこの世で最高の遊戯とは、人を欺き、踊らせ、陥れる、計略というゲームだよ。ところがね、気立ての優しい正直者は騙すのが簡単すぎて楽しみがない。どうせ騙すなら悪党だ。それも狡猾で野心家の、誰よりも自分が強くて賢いと思い込んでいる奴がいい。傲岸不遜なる悪人の心、その誇りの在処を奪い、驕慢という宝石を屈辱という土塊にすり替える。これが盗賊たる私の真骨頂。我が人生の醍醐味さあ」
こいつはくせえッー!ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーーッ!!こんな悪には出会ったことがねえほどなァーーーッ!環境で悪人になっただと?ちがうねッ!!こいつは生まれついての悪だッ!殤さん、早えことやっちまいな!
蔑天骸、殺無生とはまた違った悪人。サンボルは悪人の見本市ですな。
やってることだけを見れば、凜雪鴉は義賊と言えなくもないでしょう。しかし凜は自分の楽しみのためにだけ盗みをはたらく正真正銘の悪人です。たまたま善人では彼を楽しませることが出来ず、傲岸不遜な悪人が彼のおもちゃとして最適だったというだけです。
何かが欲しいのではなく、盗みたいから盗むのでもなく、人の鼻っ柱を叩き潰すためだけに彼は盗賊をしているのです。彼が狙うのは他人の持つ「覇者の気風」、それを奪い去ることが何よりの快楽。そんな彼から見たら確かに蔑天骸は絶好の獲物といえるでしょう。
殺無生と刑亥はどうだったのかというと、
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「あいつらも極めつけの悪党だったがゆえに、人一倍の驕慢の持ち主だった。私に盗まれてからは迷いや執着の種も無くなって、日々心穏やかに過ごせるようになったはずだよ。その点においては、感謝してくれてもいいと思うのだが」
「なんて野郎だ」と吐き捨てる殤に狂おしいまでのシンパシーを感じる。なんて野郎だ。

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ところ変わって、囚われた丹翡を捲殘雲が救いに来ます。こう言っちゃ何だけど、君タイミング悪いなあ……。殤にここにいろと言われたばかりなのに。
自分が憧れた狩雲霄が偽物の英雄と知り、手を切った捲殘雲はならば自分がその憧れた英雄になるのだと息巻きます。悪人だらけのサンボルにおいて、捲殘雲の真っ直ぐさは一服の清涼剤と言えるでしょう。
殤は別としても、凜を信じることなど出来ない丹翡は、捲殘雲とともに天刑劍の鍔が隠されてあるという寺に向かうのでした。

出立の時間が迫り、自分を呼びに来た凋命に凜は服が敗れたので別のものを用意してほしいと頼みます。凋命は嫌な顔ひとつせず新しい服を用意。前回から思っていましたが、凋命ってやたら礼儀正しいですよね。彼の言葉遣いの丁寧さには目を見張る者があります。凜を案内する時も決して礼を失しません。これも蔑天骸の教育の賜物なのか。フリーザが理想の上司と言われるのと同じように、玄鬼宗って実は結構居心地がいい職場なのではと最近思ってきました。

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捲殘雲VS狩雲霄!師弟対決に心踊らずにはいられない!

次回 Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 第一一話「誇り高き命」。
「名利栄達追い求め、辿り着いたは不毛の荒野。かつて焦がれた綺羅星は、見上げた闇のいずこにや」