響け!ユーフォニアム2 第二回「とまどいフルート」感想

今回は水着回でした。京アニにとって水着回は最早お家芸ですね。手堅い作風の氷菓でさえ(OVAとはいえ)水着回がありましたし。しかしそこはユーフォニアム、一筋縄ではいかない回でした。

練習のないお盆休み、みどりの提案で久美子らはプールに行くことに。久美子が麗奈を誘うと、
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「行く」
「え!?」
意外にも即答。本当に麗奈は変わりました。そして自分から誘っといて驚く久美子はちょっとヒドい。

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(高校に入ったら胸が大きくなるって……やっぱり本当だったんだ!)
俺は全然覚えてなかったんですが、感想スレによれば1期の1話で久美子が「高校に入ったら胸が大きくなるなんて噂、どうして信じちゃったんだろう……」と言っており、これはそれを受けたセリフであって久美子がいきなり麗奈に発情したわけではない。

プールに着くと香織先輩とエンカウント。そして久美子に後ろから抱きつく謎の美女が。
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誰だこの美女!?と思ったらあすか先輩でした。なん……だと……?
あの吹奏楽意外のことには欠片も興味なさそうなあすか先輩がプール……?「私だってプールくらい来るわよ」と自分でも言ってたし、多少は自覚があるのか。
しかしメガネを外したあすか先輩はマジで美人ですね。メガネをしていても美人、メガネを外したら超美人と、隙が無い。

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日本の英字Tシャツは訳さないのが情けというものです。こういう他言語を意味もわからずかっこいいと思うのは万国共通のようで、俺がこれ系で一番笑ったのはダニエル・ラドクリフが着ていたシャツです。

久美子はたまたま希美先輩を見かけ、やはり気になるのか話しかけに行きます。
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「2年の夏紀がサポートで、1年の久美子ちゃんがコンクールメンバーなんだよね?それってどうなの?」
まるで絵に描いたような嫌な先輩みたいなことを言う希美先輩。こういう空気が凍りつくようなことを真正面から言わせるのも響け!ユーフォニアムの魅力です。
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「北宇治が全国目指している以上、上手い人が吹くのが当然だと思います」
久美子も負けじとしっかり返しました。これを聞いて希美先輩は久美子の言葉をあっさり肯定。どうやらかつて希美先輩はそういった部活を望んでいた様子。しかしそれは彼女がいた時には叶いませんでした。
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希美先輩の過去。強豪校を目指す希美先輩はそこまでやる気のない三年生と衝突。しかし他の皆は三年生を怖がり希美先輩は孤立し、生来真面目な彼女は耐え切れなくなり吹奏楽部を辞めることを選択します。この時退部を止めてくれたのがあすか先輩であり、それが希美先輩があすか先輩にこだわる理由でした。
そんなかつて失望した吹奏楽部が今年は関西大会出場なんて、なんともやりきれない気持ちでしょう。結果を見れば、あすか先輩が言う通り三年生が卒業するまで待てば良かったわけですから。まあそうは言っても、人間そう簡単に割り切れるものではありません。ましてまだまだ未成熟な高校生なら尚の事です。
そんな希美先輩に、久美子は何がダメなのか自分が聞いてみると言うのでした。

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合宿が始まり、新しい講師が招かれました。名前は新山聡美。担当は木管楽器。そしてどうやら滝先生とは旧知の仲。強力なライバルの登場に麗奈は
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麗奈死す!デュエルスタンバイ
ユーフォニアムでこういったギャグは珍しい。

夜、久美子は鎧塚先輩とエンカウント。しかし久美子はよく重要人物と出会いますね。これも主人公補正の一つか。
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コンクールは嫌い、無ければいいと言う鎧塚先輩。ならなぜ吹奏楽部を続けているのかと聞く久美子に、もう何もわからないと答えます。
かつて自分の手を引っ張り、高校になったら金を獲ろうと約束した人はもうそこにはいず、鎧塚先輩は進むべき道を見失っているのでした。

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「あすか先輩、あとで時間貰えませんか?話したいことがあるんです」
久美子、覚悟完了

BLUE GIANT SUPREME 第3話「IN BETWEEN」感想

ドイツで吹くにはどうしたらいいのか模索する大。ドイツではみんなジャズは静かに聴くのを目の当たりにし、「盛り上がる」とは一体なんなのかを今一度考えますが、答えは出ません。

前回とは別の店のマスターに自分はここで吹けるか?と質問したところ、アジアのジャズを知らない、だから君はここでプレイできない、と素気無く断られました。ジャズについてまるで詳しくないですが、自由の音楽であるジャズに、アジア人であるというだけで壁のようなものが存在するというのは変な話に思えます。まあアジア人という以前に、前回も言いましたが大のようなよくわからない異邦人を演奏させてくれるような所は中々ないのがふつうでしょう。

さて、冬の寒空の下サックスの練習をしていると、それを見かねたおばあさんが大に自身の手袋をプレゼントしました(小さすぎて入んないですけど)。何か返せるものはないかと、大は演奏で応えることに。ドイツに来て初めてのリスナー。大は全力で吹きます。人の優しさに触れた大は、自分はどこまでも行ける気がする、と、思いを新たにします。この大の持つ絶対の自信が、BLUE GIANTの魅力の一つでもありますね。

コーヒーショップで大がコーヒーを飲んでいると、何やら話しかけてくる男が。この男が現状を打破する切欠になるのか、果たして……?

響け!ユーフォニアム2 第一回「まなつのファンファーレ」感想

 実は俺、響け!ユーフォニアムの1期はノーマークで放送当時見てなかったんですが、知人が見ろ見ろとうるさかったので後にニコ生の一挙放送で見ました。終始無感動状態の俺にとって妙に冷めたところのある久美子という主人公は非常に好ましかったし、カレイドスターのようなスポ根ものが好きなので登場人物たちがズタボロになる姿も見ていて楽しかったし、特に毎回最後に入る「そして、次の曲が始まるのです」というセリフは次の話も見ようと思わせる力があり、最後まで楽しく見ることが出来ました。
ただ難点もありました。ネットでは非常に評価の高い8話が個人的には本当に理解不能で、深刻なエラーが起こった結果記憶の改竄が行われ、俺にとって8話は葉月が塚本にフラれただけの話ということになりました(ヒデェ)。
2期の1話もネットの感想で百合百合言われてて戦々恐々としてたんですが、蓋を開けてみればそこまでひどくなく一安心しました。あれぐらいなら十分友情の範疇です。
前置きが長くなりましたが、感想に入って行きたいと思います。

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冬。古ぼけた大学ノートを手にする久美子。それを呼びに来る麗奈。最終話辺りに繋がるんでしょうか。

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1期の最終話の直後から物語は始まります。京都府大会で金賞を受賞し、見事関西大会への切符を手に入れた北宇治高校は、しばし勝利の余韻に浸ります。
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滝先生、頭頂部120%。指揮者だから固めてるのかと思ったら、あとで学校で出た時も同じ髪型でした。

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関西大会に向けて、夏休みはほぼ毎日練習が行われます。しかしその前に、チームもなかによる応援演奏。曲は学園天国。そういや2期に葉月の活躍はあるんでしょうか。彼女の恋の問題は1期で終わったし、スタメンでもないし、ぶっちゃけ出番らしい出番はないんじゃないかと思います。

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1期ではついぞ揃うことのなかった四人。昔の麗奈だったら彼女達と一緒にいることすら厭ったでしょう。なかなか感慨深いものがあります。

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新キャラその一、鎧塚みぞれ先輩。あまり他人に興味がない人のようです。そして1期ではこれでもかというほどに視聴者のヘイトを集めたデカリボンの友だちでもあります。ちゃんと友だちいたんだなあデカリボン。

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新キャラその二、傘木希美先輩。彼女については後ほど。

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新キャラその三、橋本真博。OBで滝先生の同期でパーカッションのプロ。滝先生と違いノリが軽い。

練習中にやって来た夏紀先輩。相談があるとあすか先輩に言います。
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「なになに?恋?恋の相談?」
こういう思ってもいないことをあえて言う先輩が俺は最高に大好きです(えー)。
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「私、部活に戻りたいんです!」
そこに現れたのは希美先輩でした。夏紀先輩も彼女を戻してあげてくださいと懇願します。

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二年前、コンクールからの帰り道。希美先輩と鎧塚先輩(ついでにデカリボン)は同じ中学でした。銀という悔しい結果に終わり、二人は高校では金を取ることを誓い合います。しかし一年の時に希美先輩は吹奏楽部を辞めてしまうのだった……。

なぜ部長の小笠原先輩でなくあすか先輩に頼むのか……。まあ当然ですよね。こう言っちゃなんですがあすか先輩が実質吹奏楽部のトップみたいなものですし。さてあすか先輩の返答はというと、
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「悪いけど今、練習中なの。帰ってくれる?」
素気無く断りました。ストイック過ぎて吹奏楽意外のことは一切意に介さない若干サイコパス入ってる彼女なら当然の答えです。何が彼女をここまでさせるのか、2期で明かされるんでしょうか。

自分たちだけで話し合いたいので先に帰ってほしいと言う先輩に、一年だけ仲間はずれみたいでやだと葉月。そうは言っても、先輩たちからしたら身内の恥は出来れば隠しておきたいでしょう。もちろん後輩としても隠されていい気分はしないのは間違いないのですが。

希美先輩はお百度参りよろしく毎日やって来ましたが、あすか先輩は首を縦に振りません。
まあ当然ですよね。これから部一丸となって全国大会を目指す吹奏楽部にとって昔辞めた部員が戻ってくるのは無用なリスクを抱えるだけです。よしんば希美先輩を向かい入れたとしても、同じように戻ってこようとする人が出てくるかもしれません。
しかしそれはあくまで理論の話です。理論と感情で出来ているのが人間です。時に人間は理論よりも感情を優先し、時にそれは尊いものとして受け入れられます。つまり理論と感情を完全に分けているあすか先輩はちょっと人間をやめています。

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京アニ、アイスが崩れる作画にも全力投球。

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久美子が忘れ物をとりに校舎に戻ると、鎧塚先輩が倒れていました。希美先輩が吹くフルートの音を聞いて、昔のトラウマが刺激されたようです。あすか先輩が希美先輩を入れてもなんのプラスにもならないと言っていましたが、プラスどころかさっそくマイナスになっています。

久美子は麗奈と夏祭りに行くことに。
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麗奈の浴衣は品がありますね。久美子はちんちくりん。
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「私かき氷が食べたい。ブルーハワイ」
「私クロワッサンたい焼きとサモサ」
祭り屋台にクロワッサンたい焼きはない!
 ∧_∧
⊂(#・ω・)
 /  ノ∪
 しーJ|∥|
     人ペシッ!!
     __
     \  \
        ̄ ̄

希美先輩に対し麗奈は、辞めたほうが悪く、私だったら絶対に逃げないと言います。彼女の言い分も確かに正しいでしょうが、それは強者の理論であって誰もが麗奈のように強いわけではありません。しかし彼女のように強くなければ、彼女の言う特別にはきっとなれないのでしょうね。

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花火を見てうっとりする二人。昔に比べて本当に仲良くなりました。

今週のジャンプ感想 2016年45号

・「歪のアマルガム
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打ち切られながらも最後はなんやかんやいい感じに終わらせた「三つ首コンドル」の石山諒先生が戻ってきました。……え、マジで?
俺が驚いたのはその画力の向上です。目を見れば確かに三つ首コンドルと同じ作者だとわかりますが、それも言われてやっと思い出すレベル。キャラデザ、アクション、ガジェット、一枚絵、どれをとっても三つ首コンドルとは同じ作者とは思えないほどにレベルアップしています。相当勉強したのでしょう。
話のほうは、純朴そうな少年が不幸な事故から異形の怪物になるという東京喰種を彷彿とさせる第一話でしたが、異形のヒーローものは大好きなので◯。これからも期待していきたいと思います。

・「ブラッククローバー
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アスタの腕の治療のために奔走する団員の思いを知って男泣きするアスタ。良いシーンです。
魔力に恵まれなかったけど仲間には恵まれた、というセリフで俺が思い出すのは伊坂幸太郎氏の小説「砂漠」です。大学生男女五人による日常(だいたい麻雀)をユーモラスな筆致で描いた傑作で、俺も砂漠のような大学生活に憧れましたが残念ながら叶うことはありませんでした。それでも作中の「何も恵まれなかったけど、友だちには恵まれた」というセリフは今でも俺の金言です。

・「鬼滅の刃」
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「俺じいちゃんが好きだよ!!」と言われ照れる爺という、なんと言っていいのかわからないシーン。この妙に外した笑いが鬼滅の刃の魅力です。しかし出た当初はうざくて仕方がなかった善逸が、ここまで面白キャラになるとは。

・「ワールドトリガー
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よ、よ、よ、よんまんごせんきゅうひゃくろくじゅういちぃ……!?
攻撃手6位のイコさんの約四倍のポイント数。圧倒的過ぎる。No.1攻撃手の肩書は伊達じゃないということか。

今週のジャンプ感想 2016年44号

・「ONE PIECE
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ヴィンスモーク家を抜けようとするサンジに対してジャッジが発した言葉がこれ。情が残っていたと言う言葉とは裏腹に非情さが際立ちます。
ホンマに幼い頃のサンジは不憫やで……。

・「ブラッククローバー
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ヴェットとの戦いはアスタに未来永劫癒えない傷を負わせていました。あれだけやりあったのですから、治癒不可能の大怪我でも理不尽には感じません。むしろ限界を超えて戦ったことの代償をきちんと描いたことで漫画としての誠実さを感じさせます。
トリコの腕の再生編よろしくこれから数話かけて描かれるであろうアスタの腕の治療編もワクワクするし、最近ふつうにブラクロが面白くて悔しい。

・「約束のネバーランド
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こちらも最近面白い展開が続く約束のネバーランド。シスターという全然可愛くないテコ入れキャラがいい味出しています。この展開が5話ぐらいで来ていれば……、いや、それだと早すぎるか。
あと主人公らがどうやってシスターから逃げ切れたのか描かれれば更に良かった。駆け引きがウリの作品なんですから、そこらへんもきちんと説明して欲しい。

・「ボイス ビー アンビシャス」
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こういうのを読むと磯兵衛ってマジで凄かったんだなと思います。仲間りょう先生のセンスは誰にも真似できねえ。

・「火ノ丸相撲
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鳥取白楼の選手が紹介された時、密かに俺も思っていたことを言われました。完全上位互換相手では、万が一にも勝機はないのでは。好き勝手言うことに定評のある名塚は、組み合わせによってはわからないし大太刀高校には心の強さがあると言います。あーなるほど、何も同タイプの選手同士が当たる必要はないのか。今までの例と今回も同じだという固定観念に縛られていました。

2016秋アニメ視聴予定

ここ一週間ブログの更新が滞っていたのは、
俺のTheuderbolt Fantasyへの思いを語って燃え尽きたからではなく、
最近の訪問者数の多さにあぐらをかいていたわけでもなく
風邪を引いておりましたorz(古い)
ようやく治ってきましたがまだ咳がひどい。はやく完治してほしいものです。
遊戯王ARC-Vの感想は停止します。理由はお察しください
以下今期アニメの視聴予定。予定、と言っても「舟を編む」以外は既に始まっていますが。

・新規視聴枠
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ 二期
夏目友人帳
バーナード嬢曰く。
響け!ユーフォニアム2
ドリフターズ
Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-
舟を編む

・視聴継続枠
遊☆戯☆王 20thセレクション
遊戯王ARC-V
ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない
カードキャプターさくら

感想はユーフォニアム2と舟を編むの二つを予定してます。
本当はオルフェンズ辺りもやりたいところですが、一週間に三つ挙げるのはキツいということは前クールでわかったので。
それにこのブログの本来の目的である悪役の紹介もそろそろしたいですし。

Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀 総評

まず恥を承知で言いますと、私は当初Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀に全く興味がありませんでした。存在としては知っていましたが、所詮は人形劇だろう、と。失礼かもしれませんが、多くの人もそうだったと思います。
それがたまたまAbemaTVで2話を見たことで、自分の認識が間違っていたことに気づきました。

まず「人形ってここまで動かせるんだ」ということに驚きました。見てきた人にはわざわざ言うまでもないのですが、Thunderbolt Fantasyの人形たちは本当によく動きます。そこらのアニメの数百倍は動きます。Thunderbolt Fantasyは剣によるアクションエンターテイメントなので、殺陣が毎回あるのですが、どれも素晴らしいクオリティです。勝新太郎座頭市さながらに、目にも留まらぬ早さで殺陣が展開していきます。どうやってこれを動かしているのか、不思議でなりませんでした。例えば、凜が蔑天骸との剣戟の時に、剣を一旦上に放り投げてまたキャッチして殺陣を再開するのですが、人の手で動かしているとは思えないほどに非常にスムーズな、とても人形には見えない動きでした。第0話のメイキングを見てなんとなくどうやって動かしてるのかわかりましたが、それでも、いや見てなお凄いと言わざるを得ません。非常に大変な作業を人の手で、しかも週一放送で行うとは、尋常なことではありません。
戦闘シーンは人形のみによる大迫力の殺陣と、CGをふんだんに使ったこれまた迫力十分な殺陣があり、何度も見返したくなります。CGを使うということも意想外でした。人形劇とCG。アナクロとデジタル。相反すると思われていた二つを合わせるという発想に驚きました。
ただこれには難点もあります。あまりに殺陣が早すぎて目で追えないことがしばしば。まあこれは巻き戻して何度も見返せばなんの問題もありません。

このように、凄まじい殺陣に最新のVFXが加わることで、人形劇を超えたある種アニメのような画(必殺技の存在など)が展開され、アニオタである俺はすぐにハマりました。
アニメ的表現を人形劇でやるというのが素晴らしい。これを言うと「アニメでいいじゃん」と言われるのですが、何もわかっちゃいないです。あえて困難なことをするというのが最高にかっこいい。見ているだけで作り手の情熱と才気をこれでもかというほどに感じれるのは、アニメでは中々味わえない体験です。本当に才能のある人々が妥協せずに作ったものを見れるのは、最高の贅沢と言えるでしょう。加えて、アニメでは戦闘シーンなどで激しく動く回のあとは作画節約のため動きが抑えられますが(そうしないと制作が死ぬので。稀に京都アニメーションのような毎話作画のクオリティが高い制作会社もありますが)、Thunderbolt Fantasyは毎回必ず興奮必死の殺陣があり、視聴者に対するサービスに余年がありません。
また、一口に殺陣と言っても、得物は剣だったり槍だったり弓だったりと、バリエーションに富んでいて飽きが来ません。中でも狩雲霄は前衛で戦う弓使いという、Fate/stay nightのアーチャーとも違った新しい弓使い像を生み出してくれました。

次に声優たちの熱演に感動しました。新しいことをやるという意識からなのか、声優陣の演技にかなり熱が入っているように感じられ、彼らの熱演を聞いているだけでも楽しくてしょうがありませんでした。キャストもベテラン揃いで安心して聞いていられます。また、俺がこれを知人に薦めると、人形は表情がないと言われるのですが、そんなことはありません。基本的には顔は目しか動かせない人形にも関わらず、声がつくことによって確かにその時々の表情を感じられました。

これらのことを2話を見て全て感じたわけではないのですが、ともかく圧倒された私はすぐさま1話(無料)をバンダイチャンネルで視聴し、3話からは録画して見ることにしました。
虚淵玄脚本のストーリーも良かったです。もともと氏が台湾で布袋劇を観て始まった、自身が望んだ企画なのでやる気も段違いだったのでしょう。
私にとって虚淵玄という脚本家は、まどか☆マギカの9話で(10話にあらず)その才能に惚れ込み、劇場版新編で一生ついて行くと決め、鎧武のまどマギと同じ展開で失望したという感じなんですが、Thunderbolt Fantasyを見て、偉そうな物言いですが、やはり力があるんだなと再認識しました。
物語は悪の親玉がいて、そいつから世界を左右する剣を取り返すという王道ど真ん中なストーリーですが、人形劇という奇抜な枠には分かりやすい話で合っていたと思います。人形劇でserial experiments lainや、輪るピングドラムのような話をされても困るので。
話が進むに連れて展開が二転三転するのもよく出来ていました。さすがは意表を突くのに定評がある虚淵氏、王道といえどその物語は一筋縄ではいかず何度も驚かされました。ちなみにThunderbolt Fantasyでは化け物の正体が人間だったってことはありませんでした。
多くの創作者が己の投影である主人公にあれもこれもと積み込みたがるものですが、Thunderbolt Fantasyでは色々な要素を何人かの登場人物に分け与えることで、結果キャラクターの主義主張が入り混じり、それぞれにドラマがある重厚な作品として仕上がっていました。これは虚淵氏が手がける作品で良く見られる手法です。こういった試みは別段珍しくありませんが、成功事例はそれほど多くありません。大抵の場合主役の数人が重点的に描かれ他はお座なりになってしまいます。その点Thunderbolt Fantasyは主要人物8人それぞれキャラ立ちしており、活躍も十分でした。

Thunderbolt Fantasyは痛快娯楽活劇なのでこれといったメッセージ性はありませんが、ストーリーはよく練られていました。特に己の最強の腕に見合う最強の剣を欲する蔑天骸に対し、剣は所詮道具でありそれを振るう人間こそが肝要と考え剣を選ばない殤不患という対応は見事でした。まあこの二人はほとんど絡みませんでしたが。
ダブル主人公というのも良かったです。人を謀ることが大好きな嫌なやつ凜雪鴉と、お人好しを絵に描いたような無頼漢殤不患。この二人がお互いに迷惑を掛け合い文句を言いながら物語が進んでいくというのが面白い。水と油である二人が仲良く出来るわけも無く、利害の一致で共に行動する様は見ていておかしくって仕方ないです。
セリフ回しも独特で、中二病患者の俺にはドストライク。古風な言い回しが多用され、特に印象的なのは殺無生と蔑天骸が対峙した時の殺無生のセリフ。「鳴鳳決殺の剣に言葉は無用。その剣、その天命の在処について、命を賭けて問い質す!」。うーん、痺れる。
初めは見慣れない漢字の固有名詞や人物名にたじろぎましたが、見ているうちに慣れました。というか、漢字は難しくとも読みは簡単なので見ている分には別段支障はありませんでした。

音楽も最高でした。澤野弘之お得意のボーカル入りBGMは今作でも山場を見事に盛り上げてくれました。澤野氏のBGMを使ったアニメは、ある一つの決まった最高にテンションの上がるBGMを山場に持ってくるのがお約束(いわゆる処刑BGM)ですが、Thunderbolt Fantasyでもその演出はバチッと決まっていました。やはり音楽がいいと没入感が違います。

美術のレベルも目を瞠るものだったと思います。まずキャラクターたちの服は一人一人個性が出ていて、凜雪鴉の服が装飾過多と思えば、殤不患の服はシンプルにまとめていたりと、作品全体の和を考えているのかうるさく感じません。やたら食事の作りこみが細かいのも驚きました。一見すると本物にしか見えません。まさか形劇で飯テロを食らうとは思っても見ませんでした。

キャラクターメモ
凜雪鴉
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Q.なぜ殺無生を倒せたのに放置してたんですか?
A.嫌なやつだから。
Q.なぜ最初から蔑天骸を倒して天刑劍を奪おうとしなかったのですか?
A.嫌なやつだから。
殤不患ではなくこいつが一番上にクレジットされていたのも今ならよくわかります。Thunderbolt Fantasyはある意味凜雪鴉という人間を知る物語でしたから。
彼が泥棒だったことにはそれほど驚きませんでしたが、実は超強いのには仰天しました。そしてそこから起こる疑問にもちゃんとアンサーを用意されており、それがまた彼の嫌なやつっぷりに拍車をかけました。
鎧武でも思いましたが、ぶっちーは悪人を描く時が一番イキイキしているんじゃないでしょうか。
とにかく悪人をおちょくるのが愉しいという一点で出来たキャラでしたが、そのブレなさは非常に魅力的でした。

殤不患
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るろうに剣心の剣心や銀魂の銀時のように、いつもへらへらしてるけどやる時はやるタイプ。普段は馬鹿にされるけど決める時は決めるキャラというのは見ていて痛快です。諏訪部順一のとぼけた演技も良い。主人公でありながら、あんまり戦ってないんですよね。1話(相手は雑魚)、5話(想像の中で)、7話(乗り気じゃない)、8話(本気じゃない)、11話(相手は雑魚)、12話、最終話(殺陣は無し)と七回ですが、実質彼の本気の殺陣が見れたのは12話だけ。だからこそ最高のカタルシスを得られたわけですが。
前半は彼の視聴者目線のようなツッコミ(殺無生を仲間にする時「えーっ!?」と驚いたり)がとても面白かった。そして最後はきっちり決める、非の打ち所のない主人公です。

丹翡
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おっとりしているようで意外と辛口。いや、殤に対しては丁寧だったし、捲殘雲が相手の時だけなのか……?それはそれでリア充爆発しろ、って感じですが。
オープニングの生足は必見。なんかエロい。
尺の都合とはいえ、蔑天骸の死に何か反応すればよかったのに。あんなにBlu-rayのCMで「兄の仇を!」って言ってるんだから。天国にいるお兄ちゃんが可哀想。
中盤の丹翡イジメで丹翡に同情するか興奮するかであなたの紳士度がわかります。

狩雲霄
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俺が最初に見たのは彼が登場する2話なので、印象深いキャラです。最初は「切嗣がアーチャーで主人公がエミヤwwwワロスwww」って一人で盛り上がっていました。
矢を先に放って落ちてくるところに相手を追い込むという戦い方には感動しました。鋭眼穿楊という二つ名もイカす。
俺は創作において死ぬ時が最後の花道だと考えているので、彼のあっけない死は少しばかり残念でした。

捲殘雲
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英雄に憧れる非常に真っ直ぐな性格でお調子者、まるで主人公みたいなキャラ。
ネームドキャラとの戦いでは白星をあげられませんでしたが、殤不患が精神的に完成されているため、一番成長したキャラでした。特に決別した師匠である狩雲霄に啖呵を切るシーンは非常にかっこいい。
パーティーの中では実力が劣る彼ですが、その槍さばきは凄いの一言。性格付けなのか、特に意味もなくぐるぐる回していたのも高ポイント。
名を挙げることに命を賭けていた彼が、最終的に丹翡とくっついたのは意外なようなそうでないような。まあ丹翡が殘雲の名を英雄として語り継ぐと言っていたので、彼としては万々歳でしょう。そうでなくとも護印師って身分が高そうですし。

刑亥
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結果的に(また封印されたとはいえ)一番目的を果たせたのは彼女でしょう。出来ればもっと鞭で戦うところが見たかった。ARIAアリシアさんのようなあらあらうふふ系でもなく、カレイドスターのレイラさんのようなツンツン系でもない大原さやかさんの演技は新鮮でした。
彼女の戦い方で一番面白かったのは、6話での狩雲霄との合わせ技、死体を操る呪符を矢で射って貼り付けたやりかたですね。死体を操るのは大軍相手だと恐るべき能力です。あと7話で披露した歌も良かった。

殺無生
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鳴鳳決殺の名を持つ麗しき剣鬼。彼の登場で物語は一気に緊張感を増しました。
三対一でも一歩も引かないどころか余裕すら見せるその強さに惚れ惚れしました。ポジション的には中ボスだと思っていたので、仲間になったのは意外でした。
彼もまた強さを求めるという一点のみで出来たキャラですが、例え負けると分かっていても戦うその矜恃には感激しました。
何と言ってもVS蔑天骸はThunderbolt Fantasyのベストバウトの一つでしょう。
あと、彼独特の、「○○○○○……ぞ」という語尾を区切った喋り方は個人的にツボでした。
ただ、彼が死んだ後に凜も(恐らく)殤も彼より強いことが判明したことで、相対的に俺の中での格が下がってしまいました。いや、良いキャラなんですけどね、ホントに。二刀流なのもポイント高し。

・蔑天骸
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関氏の熱演も相まって、非常に魅力的な悪役に仕上がっていました。特に自分の強さを試すこともせず、決して疑わないその姿勢はまさに求めていた悪役の貫禄でした。まあ、その驕り高ぶる性格が凜に目をつけられてしまったのですが。
彼を語る上で欠かせないのは、何と言ってもそのカリスマでしょう。常に自信に溢れ大きなことを言う彼は、無条件で付き従いたくなります。玄鬼宗が喜んで身命を捧げるのもわかるというもの。あと決して暴君ではなく、部下を無闇に罰したりしないどころか何かしてくれたら礼をいうところなんかまさに理想の悪役です。強さと貫禄が高い次元で同居しています。
だからこそ凜に負けたのはショックですが、劇中で唯一凜に勝ったのも蔑天骸なので、最後まで悪役の意地を貫いてくれて満足です。

総じて、最高レベルの作品だったと思います。これを見なきゃ人生損する、とまでは言いませんが、存在を知っていて見ていないのは非常に勿体ないと言えるでしょう。
一つ難点を挙げるとすると、虚淵氏の他作品を思い出す点がいくつかあるのが気になりました。蔑天骸はFate/stay night(及びその前日譚のFate/Zero)のギルガメッシュっぽいし、殤不患の必殺技はまんま起源弾だし、デウス・エクス・マキナっぽい終わり方もまどか☆マギカをなんとなく思い出させます。まあこれらはさして気にするほどではないですし、他の面白い部分で十分に目をつぶれます。

Thunderbolt Fantasyより面白い作品はあるでしょうが、Thunderbolt Fantasyより面白くて凄い作品はそうはないと断言できます。
感想は途中から書き始めましたが、あまりにもかっこいいセリフが多すぎてセーブしないと全部書き起こしてしまいそうな勢いでした。一つの記事を上げるのに長いと三時間くらいかかってしまい、時間が取れず遅めに感想を上げることもしばしば。それでもなんとか完走出来たのは、やはり書いていて自分が楽しかったからでしょう。いつになるかわかりませんが、二期も感想を、今度は1話から書いていきたいと思います。
今はただ偶然これを見た自分の幸運と、これほどの作品を世に送り出してくれたことへの感謝で胸がいっぱいです。二期の放送を心より楽しみにしてお待ちしております。