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ゼーガペインADP 感想

だまされた……(良い意味でも悪い意味でも)。

ゼーガペイン10周年プロジェクトのトリを飾る、ゼーガペインADP」(以下ADP)を観てきました。本当は公開初日に観たんですが、あまり筆が乗らず感想を書くのが遅れました。

来場者特典の色紙はシズノ先輩でした。本当はリョーコが欲しかったですが、二周目の特典なので断念。しかしカノウ・トオル(映画部部長の天パ)の色紙をもらった人は悲惨ですね……。他に誰かいなかったのか。

まず大前提としてADPはTV版の総集編ではありません。後で詳しく述べますが、ADPは完全にファン、それも熱心なファン向けの作品です。なので新規が観ても意味不明、とまでいかなくてもあまり楽しめないでしょう。ですので「ゼーガペインは気になるけど2クールは長いし、劇場版見てみよう」なんて考えてる人は観ないほうがいいです。

熱心なファン向けと書きましたが、むしろ熱心なファンほどADPは合わない可能性もあります。私はどちらかというと熱心なファン側で、そんな私からするとADPは良いところもありましたが悪いところの方が目立ってしょうがなかったです。

ではここからはネタバレありで、詳しく語っていきます。

総集編ではない

ADPは総集編ではありません。では一体何なのかというと、恥ずかしい話後半になるまで気づかなかったのですが、ADPはTV版の前日譚であり、言うならば「ゼーガペイン・ゼロ」にあたります。

「「ゼーガペインADP」は「ゼーガペイン・ゼロ」だったんだよ!」

「な……なんだって――!!」

いや、ヒントは多かったんですよ。シズノ先輩は中々出てこないし、キョウはなぜか最初からセレブラントだし、ゼーガペインは影も形もないし。

それもそのはず、ADPはソゴル・キョウが記憶と人格を失う前の話なんですから。

つまりADP→TV版と繋がるわけです。ここまで書けば察しのいい人ならわかると思いますが、ADPは最後、キョウが月面で自爆して幕が下ります。なんとも救いのない……。なのでTV版を見ていない人にとってはこれ単体ではバッドエンドの物語としか映りません。つまりADPを観て十全に楽しむにはTV版の記憶が絶対必要ということです。

私がようやくこれが前日譚だと気づいたのは、TV版でも描かれた、キョウがイェルにミサキ・シズノという名前を与え、キスをするシーンです。それまでは本当にずーっと総集編だと思っていました。

ADPの本編を簡単にまとめると、舞浜のループ(水泳部のみんなと仲直りしてまた戻っての繰り返し)と並行してまだ存在していなかったゼーガペインが完成し、キョウがシズノと初めて出会い、最後は月面上のジフェイタスでガルズオルムと戦いキョウがアルティールとともに自爆して幕引き、という感じです。

ループ部分はTV版の使い回しで、しかも結構繰り返されます。ファンである私からしても見たことのある部分を何度も繰り返されるのは辟易しました。

そもそも何故私含む多くの人が総集編だと勘違いしていたのか。

まず公式から「TVシリーズを再編集&新規カットを加え、新解釈の内容となります」という説明がなされました。この時点でフツーに総集編だと思います。新解釈というのも2クールという長い作品をまとめるにあたって新しい何かしらの定義付けを行ったのだろうと考えておりました。加えて、こちらを御覧ください。


ゼーガペインADP 劇場特報

キョウとリョーコに焦点を絞った映像で、TV版の印象的なシーンやセリフが多く見られます。これ見て総集編だと思わないほうが嘘というものでしょう。しかしADPは前述の通り前日譚なので、リョーコはセレブラントにはならないし必然的にロストもしないしシマのオリジナルももちろん出てこないし「ミテイルセカイヲシンジルナ」のシーンもないしリョーコがシンを看取るシーンもないしリョーコと花火を見るシーンもないしでこの特報の映像はほとんどADPでは使われていません。つまり嘘っぱちです。まあこれも仕込みの一種なのでしょう。このあとに配信された本予告ではそういったことはありませんでした。まあ本予告も一番大事なキョウとシズノ先輩の別れを結構見せてて今見ると「うーん」という感じですが。

しかし、既存映像を使いまわしてはいるけど総集編ではない、というのは、物語開始時点で既に何度もループしており、同じ時間を繰り返すという設定を持つゼーガペインだからこそ出来ることとも言えるでしょう。

良かった点

・前日譚だとは思っていなかった

何度も言いますが、観るまで総集編だとずっと思っていましたので、前日譚だったのには良い意味で驚かされました。恐らくこれは意図的に伏せられていたのでしょう。……と思っていたのですが、ADPの最初の企画名はそのものズバリ「ゼーガペイン・ゼロ」だったらしく、知ってた人は知ってたんじゃないでしょうか。

・新規カットが多い

新規カットは本当に多かったです。あの花やスタードライバーの劇場版で訓練されている私は、新規カットがほとんどないことも覚悟していましたので、これは嬉しい誤算でした。大体6~7割ぐらいは新規カットでした。もうちょっと頑張れば完全新作でも行けたんじゃないか、というぐらい多い。

・アルティールの作画が凄い

新規カットで一番恩恵を受けたのはやはりアルティールのCGでしょう。中でもアルティールが初めて大地に立つシーンは鳥肌モノです。細かいディティールまでびっしり描写されており、CGの進歩を感じました。

・敵ロボットのバリエーションが増えた

TV版ではコピペされた戦闘機ばかりでしたが、ADPではTV版よりもバリエーション豊かになっています。

・妹がかわいい

TV版最終話で話題をかっさらっていったとかいってないとか言われるキョウの妹ですが、ADPでは結構出番が多い。下手したらリョーコよりも多いかもしれない。そしてその一挙手一投足は中々にかわいいです。キョウはこんな妹をもてて幸せだなー、なんて思っていたら、妹は幻体としても存在しない、完全な死者でした。オーマイゴッド。じゃあキョウが見ていたものは一体なんだったのかという話。単なるプログラムのようなものなんでしょうか。

・新キャラがかわいい

水泳部の先輩、幼女AI、別の艦のバイザーをしてる艦長と、女性の新キャラは皆かわいかったです。校長?ああそんなのいたね。驚いたのは妹が言っていた先輩というのはシズノ先輩のことではなく昔の水泳部の先輩のことだったこと。キョウは彼女のことが好きだったんでしょうか。幼女AIもなかなかのあざとさを持っていたのですが、キョウが妹と母親の真実を知ったのと同時に消えてしまいました。何故だ。

・TV版では描かれなかったキャラの過去が知れる

TV版では既にロストしており、名前だけだったカノウ・トオルと、ハヤセの恋人であるツムラ・サチコがいかにしてロストしたのかが知れて良かったです。あとあまり良い印象のないクロシオ先輩とイリエ先輩がゼーガを降りた時の詳細や、クラゲ先生が実は量子サーバの研究者であり記憶を意図的に消してもらったことといった、それぞれの過去が知れるのは面白かったです。

・シズノ先輩の気持ちが良く分かる

ADPではキョウとシズノ先輩の出会いから最初の別れまで描いているので、シズノ先輩がキョウを失った時どれほど辛かったのかが良く伝わってきました。あの別れのシーンをスクリーンで観れただけでも、観た価値があると思います。

悪かった点

 ・ループを繰り返し過ぎ

三回ぐらいメドレーやって始業式に戻ってループという流れを見せられるし、毎回同じことを言う妹(伏線でしたが)など、同じ映像を何度も見せられるのは見ているこっちが辛くなります。エンドレスエイトがほんのちょっとだけ頭をよぎりました。ほんのちょっとだけね。意外にもTV版はループ描写は少ないんですよね。劇中では一回しかループしませんので。

・新キャラの必要性

良かった点で新キャラがかわいかったと言いましたが、その必要性ははっきり言って感じませんでした。果たして本当にこの人達は必要だったのか?という疑問は晴れません。中でも新しい復元者(調べたらパチスロのキャラクターのようですが)はやられ役のために出したようにしか見えませんし、実際そうなのでしょう。カノウ・トオルも意味深なことを言う割にあっさり退場と、あまり見せ場らしい見せ場はありませんでした。

・キョウのキャラクター

個人的に一番の問題点。確か記憶と人格を失う前のキョウはもっとナイーブで、話を聞く限り後ろ向きな性格だったと記憶しているのですが、ADPのキョウはとてもそうには見えません。TV版キョウと全く変わらないような気がします。そのせいでキョウがいきなりシズノ先輩にキスするのには違和感がありました。またこのキョウが「ミテイルセカイヲシンジルナ」とメッセージを残すとも考えられません。あれはもっと前のキョウのメッセージだったのでしょうか。

・ぶっちゃけ観なくてもだいたい分かる

ADPがゼーガペイン・ゼロであることはもう言いましたが、正直ADPはTV版視聴者が十分に補完可能な内容です。何故なら大事な場面は全てTV版で描かれているから。ADPはそれにちょっと肉付けしただけです。キョウの前のループはこんな感じだったんだろうなあ、と考えていたものはさしてADPと変りないはずです。ADPはそういった想像の余地を奪ったとも言えるし、あるいは映像化してくれたとも言えるので、一概に悪かった点とも言えませんが、個人的にはマイナスです。

・構成の雑さ

前述したようにループを何度も繰り返すのですが、それはあまりうまい構成とは言えません。また、特にひどいと思ったのはキョウがシズノ先輩に夏祭りを説明するシーン。いきなり場面が変わってTV版でも流れた「and you」がかかり、これまたTV版と同じそれぞれの浴衣姿がスライドショーのように流れるのにはがっかりしました。もうちょっと頑張れよ!というか場面転換がいきなり過ぎて何事かと思ったわ。あと個人的にはメドレーのシーンはTV版のBGMのほうが良かったと思います。

気になった点

ゼーガペインが完成されるまでどうやって戦っていたのか

これについては描かれていましたね。ゼーガペインが出来るまではゼーガファイターと呼ばれる無人戦闘機で戦っていたとのこと。……本気でこのネーミングはどうにかならなかったのでしょうか。ゼーガペインで是我痛と一つの言葉なのに、ゼーガだけ抜き出すのはちょっと納得いきません。まあ細かいことなんですけどね。

・ループするたびに衰退するテクノロジー

最初キョウのケータイは端末すらないARによるものだったのに、ループするたびに退化し最終的にはTV版のケータイになり、ペインオブゼーガも最初はVRによる操作だったのがループ後にはHMDと普通のコントローラーになるという、何故かループするたびにローテクになるというのが気になりました。ループがゆるやかな退化であることを暗示しているのでしょうか。

・ミサキ・シズノという名前

ミサキは恐らく妹の名前からというのはTV版から既に分かっていましたが、結局シズノの由来はわからずじまいでした。

・リョーコが見た記憶

何故か、本当に何故かリョーコが自分がセレブラントとなって戦う未来の記憶を幻視するシーンがあります。これについてはまるでわかりません。しかしADPのキャッチコピーが「忘れられない、未来(ヰタミ)の記憶(オモヰデ)――消されない」であることからも、重要な事であるらしいと考えられます。量子世界では未来もまた観測可能なデータということなのでしょうか。

総評

良かった点も確かにあるし、観て良かったと思いますが、あまり人には勧められません。ただ、TV版の総集編にするのではなく、エピソードゼロにしたのは英断だったと思います。逆説的に前に言った、ゼーガペインを2時間にまとめるのは不可能なんじゃないかという意見が証明された気がします。

そう言えば最後に「NEXT ENTANGLE」と表示されていましたが、まだゼーガペインは何かしら続くのでしょうか。ADPは少しばかり残念な結果になってしまいましたが、といってゼーガペインに対する思いは微塵も揺らいではいないので、もしまだ動きがあるなら追いかけて行きたいと思います。